武士(もののふ)は黙して座する
ゆっくりと。

男は立ち上がる。

「あくまで力づくというのならば」

男は背中の刀剣の柄に手をかけた。

「この周防五郎之介時貞(すおうごろうのすけときさだ)、お相手仕る!」

「!!」

途端に男…時貞から発せられる、荒ぶる殺気。

僧侶は瞬時にして時貞との間合いを取った。

そして。

「これならどうだ!」

袈裟の懐から出した数本の独鈷(とっこ。密教で用いる。中央に握り部分があり、両端がとがっている杵形の仏具)を投擲する!

「…!!」

独鈷は時貞の胸板に突き刺さる。

苦痛に顔を歪める時貞。

「この結界からは逃げる事はできんぞ。このままここで魂魄を四散させてやる!」

僧侶は錫杖を構えて叫んだ。


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