寄っていきませんか。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー----------------

ジメジメとした真夏らしい暑さに、まだ少し眠くて気だるい体を起こす。


白いシーツに水滴が落ちて染みたのを見て汗だくなのかとふと思った。

確かにこの暑い夏、汗はかいてるけどしたたる程ではない。頬を流れる水は、多分、涙なのだろう。



『なんで、泣いてるの』

寝起きだからか掠れた声が出て来たけど、誰も居ないし誰も聞くハズがない。

きっと変な夢でも見てたのかな。

特に何も考えず、長らく眠っていただろうベッドを降りてキッチンへ行った。


『のど渇いた』

一人暮らしが長いからか、独り言が多いのがもっぱら最近の悩みだ。


キッチンへ行き冷蔵庫のドアを開けると、今だけは真夏という事を忘れそうな涼しい空気が溢れてきた。

このままずっと開けていたいという気持ちを押さえて、普通の水を取り出す。

この家(マンションだが)には誰も来ないのでコップに入れてから飲むというめんどくさい事をせずにすむ。

そのまま2リットルの水が入ったペットボトルを持ちながら、リビングのソファに座ってテレビをつけた。

朝の情報番組がやっている事で今、朝だと気付く、この家(何度も言うがマンション)には時計は置いていない。

いや、正確には時計すらも。


高校生になり一人暮らしを始めたから、もう住んで2年になるけど恐らく、他の人が入ったら不自然な程物が無い事に気付くだろう。

リビングはソファにテレビ、テーブル、本棚、観葉植物位しかない。キッチンも一応ついてるけど、めんどくさくて料理はあまりしない。

それにトイレとお風呂と、寝室にはパソコン机とベッドだけ。


部屋は白と黒のモノトーンでどう見ても女の子の部屋には見えないどころか、人が住んでるかどうかも怪しまれるだろう。








< 10 / 18 >

この作品をシェア

pagetop