寄っていきませんか。
トイレで涙と、汗と涙で落ちたメイクを直して出た。


「瑞季ちゃん」
今日何回目かと聞きたくなる声。


『何よ。なんで泣いてたのとかデリカシー無いこと聞いたらぶん殴るわよ』
よりによってこの男に泣き顔見られてしまった事の恥ずかしさで、目を反らしながら言った。


「ねぇ瑞季ちゃん」
いつもは優しくて安心感のある声が固かった。

その声に顔を柳瀬の方に向けた。


『何...』
柳瀬はいつもの軽さは感じられない真面目な顔をして、けど少し悲しい目をしてた。


「腕出して」
は?腕出して?意味がわからなくて困惑してると、苛立たしそうに柳瀬は私の腕をつかんだ。


『あ...』
柳瀬が掴んだ腕には、少し血の滲んだ爪痕があった。


「瑞季ちゃん何か嫌な事とか辛い事ある時、感情を隠そうと自分で自分の腕に爪たててるの気付いてなかった?」


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