黄昏の千日紅
「富長警部、先に病院に搬送するそうです」
「分かった」
彼等に優しく誘導され、暗闇から外に出ると、少女の視界に眩しい光が入り込み、思わず目を強く瞑った。
目をゆっくり開くと、少女の瞳から一粒、また一粒と水滴が零れ落ちる。
布で支えてくれている黒い服の人が、さっと、頬につたう水を拭ってくれた。
「ありがとう」と少女が言うと、男は驚いたような表情を見せ、ゆっくりと口角を上げた。
暗闇の外は息がしやすかった。
あの小窓から見えていた風船の飛んで行った小さな世界は、こんなにも広かった。
真上にある青空は途轍もなく澄んでいて、果てしなく高かった。
” ああ、世界は、
こんなにも、美しい… ”