黄昏の千日紅
樹先輩の父親と初めて対面したのは、先輩に会いに行くようになってから、一週間が経った頃だった。
その頃には、私があまりにもしつこかった所為か、彼は徐々にこちらに顔を向けてくれるようになった。
いつも無表情な彼に、少々困惑や戸惑いのような表情が垣間見えたのも、その時が初めてのことだった。
私はそれだけでも少しの進歩だと、頗る嬉しく思った。
泣きそうになるくらいに、嬉しかった。
先輩の父親は、週に何回か仕事終わりに彼を迎えに来るようで、先輩の横にある私の存在に気付いた時の表情は、心底驚いたというものであった。
すかさず私が「朝倉ひなたと申します」と彼の父に言えば、「篠田竜成です」と、笑顔で挨拶をしてもらえた。
その後「樹と仲良くしてくれてありがとう」と、温かい言葉を添えた彼の表情は、どことなく先輩に似ていて、私の胸が火傷をしたように熱くなった。
少しの間、竜成さんと話をし、先輩についてのことも詳しく教えてもらった。
先輩は、その間もひたすら数字を言い続けていた。
多分、永遠に言い続けられるのだと思う。
私と竜成さんは、そんな彼の様子をただじっと見つめていた。