黄昏の千日紅
樹先輩の側に行くようになってから、半年に突入した頃、初めて先輩に「ひな」と名前を呼んでもらえた。
それが私にとっては大層大きな出来事で、感極まった私は彼の横で大粒の涙を流してしまった。
彼は、特別驚くこともなければ呆れた様子もなく、首を少しだけ傾け、じっとこちらを見つめていた。
竜成さんに会った時、そのことについて報告すれば、彼は頗る驚いた様子で微笑みながら私に言った。
「樹が人の名前を呼んだのは、ひなたちゃんが初めてのことだよ」と。
その言葉が、私の涙腺を更に崩壊させたことは、言わずもがなである。
そして、樹先輩との出会いから、あと少しで一年が経とうとしている。