黄昏の千日紅
毎日、本当は、心配と不安で押し潰されてしまいそうだ。
あの、儚さを身に纏った先輩が、いつか不意にふっ、と、居なくなってしまうのではないかと。
私の前から忽然と姿を消し、この幸せな月日が、まるで無かったことのようになってしまうのではないかと。
それくらいに、そう思ってしまう程に、先輩は今にも壊れてしまいそうな繊細な硝子のようだ。
がしゃん、と音を立てて崩れ落ち、空から降ってくる霰のように、そのうち地面で溶けて無くなってしまうのではないかと。
彼の瞳になってみたい。
彼自身になってみたい。
一度だけでいい。
彼の見えているもの、思考も記憶も全て、私が受け止めるから、
だから。
なんて、こんなことを思うことは彼にとって、烏滸がましいことであろうか。