黄昏の千日紅
「美咲、私そろそろ帰るね」
私は笑顔で、親友である美咲に声を掛ける。
すると、彼女は裕太くんから目を離し、私に向けて頬を緩めながら言った。
「夏木、裕太の面倒見てくれてありがとね。昨日も同窓会で久々に会えて嬉しかったよ」
「私も、会えて嬉しかった。また、都合いい時にご飯でも行こうよ」
私がそう告げると、彼女は満面の笑みで応える。
その後、美咲の隣に立つ彼が私に向かって口を開いた。
「俺からも、ほんとありがとな」
私はゆっくりと横に首を振る。
「久々に学生に戻った気分になれたよ。こっちこそありがと」
「何か、俺ら歳とったなーって感じだな。切ねえー」
「ほんとね、切ないねぇ」
切ないよ、貴方が私の隣に居なくて。
「もう気付けばアラサーだもんね。悲しいわよねぇ」
本当、悲しいよ。
親友が自分の好きな人と結婚して、子供もいるなんて。
「また東京戻ったら職場で会おうな!」
一番辛くて切ないこと、言わないでよ。
平気な顔で、普通な顔して。
言わないでよ。