黄昏の千日紅






「はいはい。じゃ、また浩太とは職場でライバル同士宜しく。美咲は育児頑張ってね」




「うん。ありがとう」

「また職場でな!」







見せないでよ、その屈託のない笑顔も、その左手の薬指も。




私はこんなにも苦しいのに。






私は無理矢理作った笑顔を二人に向け、自分の胸が張り裂けそうな程傷んだことに気付かないふりをして、踵を返す。






中学の頃、吃驚したよ。



私の親友の、美咲のことが好きだって聞いたとき。



驚いたよ。
高倉くんが協力して、浩太が美咲に告白した時。



そして二人が、次の日から付き合うことになった時。



もうあれから十二年も経ってるのに、まったく、未練がましい私。




私は一人、嘲笑を浮かべながら空を仰ぐ。







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