黄昏の千日紅
「ハチは、あなたに生きて欲しいと思ってるから助けたのよ。二度も」
「…………」
「ちゃんと感謝して、ハチの分まであなたは生きる。それで良いのよ、あの子はそれを望んでいるのよ」
「でも…」
ハチ。
私はそれで良いのかな。
私を恨んでいない?
私は母の体にしがみ付く。
私の瞳から滴る涙で、母の灰色の服にシミが広がる。
後頭部を撫でる母の掌の温もりが、私の気持ちを少しずつ和らげる。
私だけ生きていていいのかな。
ハチがいないこの世界で。