黄昏の千日紅
プリムラ
高校二年の秋、Aクラスに転入して来た、ある男子生徒が居る。
私はDクラスで、Aクラスとは階が違い教室が離れている為、彼とは一切接点はない。
しかし見掛けることは偶にあった。
移動教室で廊下ですれ違ったり、購買で見掛けたり、まあその程度だが。
きっと彼は、私の存在など知る由もなく、知ったとしても興味すら持たないのであろう。
私は彼を見かける度に、その姿を自然と目で追ってしまっているというのに。
名前も知らない彼。
知っていることは、すれ違いざまに周りの人間から「A」の呼ばれていたこと、そして転入早々、初日から大人気であったことくらいだ。
何故「A」と呼ばれているかは分からない。
単純にAクラスであるからか、それか、何かのあだ名なのかもしれないと思っている。
私は友人が少なく、Aクラスに仲の良い人間など勿論居ない訳で。
クラスの唯一の友人にさえ、何となく恥ずかしくて訊けなかった。
それに、私のような人間が彼について問い質すなんて気が引けて、誰にも訊けずにいる。