黄昏の千日紅
小さい頃から親の転勤だったり、離婚だったりで、彼方此方連れ回されていた俺は、引っ越しや転校に慣れていた。
何処に行っても、何処で暮らしても、特別違いが感じられなかった。
全てが同じに見えた。
俺が高二の秋に転校することになった新しい学校も、大して何とも思ってはいなかったし、頭の出来が昔からそこそこ良かった俺にとっては、編入試験も安易なものだった。
名門校だか何だか知らないが、前の学校と何も変わりはないように思えた。
今までずっと転々としてきた俺には、友人だの、親友だの、仲睦まじく思える人間など当然一人もおらず、人間関係を築くことなんてただ面倒臭いものに過ぎなかった。
「永」と言って、俺の周りを取り巻く男女の話に適当に相槌を打っては、仮面のように張り付けた笑顔を振り撒く。
” 慣れ ”というものは恐ろしいもので、いつの間にか本来の自分の姿が分からなくなる程、俺は自分という存在を見失いつつあった。