黄昏の千日紅
彼女はどうやら「ケイ」と呼ばれているらしい。
そして放課後は、図書室へ通っていると勝手に判断した俺は、彼女の姿を久々に見れたことと、少しでも彼女について知り得ることが出来た為に、その日は一日中機嫌が良かった。
周りの人間にも「永、今日元気だね」なんて言われる始末。
酷く単純な自分に寒気がしたが、まあ、仕方あるまい。
当然、俺はその日の放課後、図書室に行くことに決めた。
この学校の図書室は、西棟にあるようで、東棟から渡り廊下を歩いてすぐの所にその校舎はあった。
見た目の率直な感想は、ただただ古い。
名門校であるというのに、何故改装しないのか。
寧ろ東棟と合併してしまえばいいのに、なんて一人考えながら西棟へと足を進める。
図書室の扉は硝子製で、廊下から見えるすぐのカウンター席に彼女は座って本を読んでいた。
彼女がその時手にしていた本は、俺も読んだことのあるミステリー小説で、かなり小難しい内容であったことは記憶にある。
ただ、かなり前に読んだからか記憶は曖昧で、内容は殆ど覚えていなかった。
図書室には、彼女以外あまり人がいない様子で、純粋な少年のような俺の心臓は尋常ではない音を立てている。
俺は、そのまま踵を返すと、明日にでも早めに行って読んでみようと考えながら帰路についた。