黄昏の千日紅
ちらりと横目で妹を一瞥してから、本をぱらぱらと捲る。
考えているのは彼女の姿。
内容なんて全く入ってこない。
ふと、裏表紙を開いたところを何気なく見たとき、ネームカードの一番上に書かれた可愛らしい癖のある字を見つける。
そして俺はそれを見て、目を見開く。
思わずがばっと飛び起きた。
隣で「何!?」と叫んでる妹の声がするがそれは完全無視。
俺の名前の上に、一人だけ記載されている名前。
きっとこれは。
「如月、景…」
俺はその文字を見て薄く笑みを浮かべると、ぱたん、と小説を閉じた。
「何一人で笑ってんの?気持ち悪」
妹が怪訝な顔をしてこちらを見ている。
「あ?うるせーよ」
「早く勉強教えろ」
「教えて下さいお兄様だろ」
モノクロの世界が、彼女のお陰でこんなにも輝くとは、今迄の俺は夢にも思っていなかった。
「明日からが勝負だな」
「は?何が?遂に頭おかしくなったの?」
「うっせーガキ」
「はあ!?」と言って反抗する妹の頭をわしゃわしゃと撫でながら、俺は再び笑みを零した。