黄昏の千日紅
私は頭をぶんぶんと勢い良く横に振って、歩く足を速めた。
駄目だ、最近何かがおかしい。
夢もそうだが、嫌なことを思い出してしまいそうな、何か忘れ去りたい過去があるかのような。
__いや、ただの夢か。
私は正門を潜り、校舎に向かってゆっくりと歩く。
昇降口に入っても、誰一人出会さない静寂の広がる朝の学校は、夜間の学校と同じくらいの恐怖が感じられる。
無機質な冷たい廊下が、じっとこちらを睨むように見据えているような気がして、寒気すら感じる。
自分の上履きが、廊下の上でキュッキュッと擦れる音だけが響き、やはりこんなに早く来なければ良かったと後悔した。
私の教室に入ってみると、当たり前だが誰も登校していない。
いつもの癖で机の中に手を入れると、カサリ、と音がした。