黄昏の千日紅





ルーズリーフを拾い上げ、それをぐしゃぐしゃ、と、丸めてゴミ箱に捨てる。




三階の自分の教室を出て、無意識に周囲を見渡してから、音楽室のある四階へとゆっくりと階段を登っていく。





すると、私が近付いている筈であるのに、徐々にピアノの音が近づいて来るような不思議な感覚に陥る。



気持ちが悪い。



四階に登りきると、静寂の中で可憐に流れるメロディーが、私の鼓膜を強く刺激し、頭に亀裂が入ったかのような酷い頭痛に襲われる。





目の前がチカチカと白黒へと変化し、視界が霞み、酷い目眩が起こる。






同時に襲いかかってくる吐き気。






どうしようか、このまま引き返そうか。



ピアノに近付く度に、益々気分が悪くなっていく。



しかし、そこに行けば何かが分かる気がする。



私を散々苦しめてきた、何かが。








覚束ない足取りで廊下を歩く。



音楽室の扉の目の前に辿り着き、深呼吸をしてから、思い切り扉を開けた。






すると突然鳴り止む、煩わしく聞こえていたピアノの音色。









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