黄昏の千日紅
私は、ピアノを弾いていた張本人に視線を向けて、大きく目を見開いた。
ぽろん、と少しだけ音を奏で、目の前の人物がゆっくりとこちらに顔を上げ、互いの視線がぶつかる。
「何してるの?……飛鳥」
私の震える声が、氷のように冷たい空気の中に溶け込んでいく。
飛鳥は、ふっと笑みを浮かべ、私を見据えて言った。
「何って、ピアノを弾いてただけだよ」
「じゃなくて。何で、こんな朝早く…」
彼女の口角が綺麗な弧を描き、口を開く。
「全部、嘘だからだよ」
「…は?」