黄昏の千日紅
飛鳥は、ふっ、と笑みを零す。
「そうだよね」
「………」
「信じられるわけないよね。こんなの」
床を見つめていた彼女が、静かに言葉を紡ぐ。窓の外は未だ薄暗いが、カーテンの向こうから、青白い光が少し漏れている。
「……信じられないかもしれないけど、本当のことなんだ。嘘みたいだけど、本当なんだ」
飛鳥がぽつりと、言葉を零すと同時に、先程とは打って変わった表情になり、彼女の目から一滴の涙が床に落ちた。
それが木の床に、じわじわと染み込んでいく。
「…飛鳥?」
彼女が顔を上げると、今までに見たことのないくらいの悲痛な表情をしており、私は、言いたい事が沢山あった筈なのにも拘らず、思わず全ての言葉を飲み込んでしまう。
「…凛、聞いて?」
私は、ぐっと喉を圧し殺すように黙り込むと、彼女は涙声で話し始めた。