黄昏の千日紅
飛鳥の言い分はこうだった。
__今から遡ること、約一四〇年前
慶応四年。
明治九年に樋野宮飛鳥と、彪雅凛はお互いが九歳になった時に、ピアノ教室で知り合った。
二人は天性の才能を持ち、ピアノの技術が周りの人間よりも、遥かに優れていた。
互いに何年間かは良き戦友としてライバル視していたが、一三歳になった二人は思春期ということもあり、お互いを異性として意識し始めた。
そして何方からともなく惹かれあっていき、順調に愛を育んでいく。
然しながら、凛は良家のお嬢様であり、産まれて間もない頃から両親に決められた許婿がおり、一六になった時に政略結婚をすると、突然両親から告げられた。
そのことに対し、不満を抱いた凛はすぐに飛鳥に相談した。
すると、彼はどうにかして両親からの束縛を解いてあげたいと考えた。
そして、悩んだ末、二人は現実から逃げるように駆け落ちを選んだのであった。