黄昏の千日紅
「…凛を、初めて中学の入学式で見掛けた時に、当時の彪雅凛と全く同じ容姿で驚いた。声も性格まで一緒で、本当にあり得ないと思った…」
「…っ…」
私は頭の鈍い痛みに耐えながら彼女の話に耳を傾ける。
「名前だって、書く漢字は違くてもあんたは日向凛で、私は性別が変わっても日野宮飛鳥。…こんな偶然あるのかって」
そこまで言ってから、彼女は涙を次々流していく。
「ごめんね。ずっと…ルーズリーフ、気持ち悪かったよね、それに、嘘吐いてて本当にごめん…」
途切れ途切れに、弱々しく声を発する彼女は、相当今まで苦しかったのだろう。
彼女こそ、誰にも相談出来ない悩みを抱えていた。
私は親友の癖して、彼女に頼ってばかりで、何にも気付いてあげられなかった。
そう思うと、私の瞳に薄い水の膜がじわじわと張っていくのが分かる。
「私こそ、ごめん…」
私がそう言うと、飛鳥はゆっくりと顔を上げ、赤く充血させた潤んだ瞳でこちらを窺うように見た。