黄昏の千日紅





飛鳥がゆるり、と、立ち上がり、ピアノにそっと手を置く。





「悪いことしたって本当に思ってる。でも、凛に何かしら思い出してもらえないかなって。ただ共有したかったの、今まで虚しかったの。ごめん、ただのエゴだね」







” 君は永遠に僕の ”







そうか。


ルーズリーフに書いてあったあの言葉は、飛鳥の過去の気持ちだったのか。




辛くて悲惨な別れをしてしまった過去の私達のことを、彼女は私に思い出してほしかった。




__ただ、それだけの。







「…私、当時の記憶は全くないの。だけど、飛鳥のピアノの音色を聞いたら急に気分が悪くなって。何か、思い出したくないような、後ろめたいことでもあるような、…そんな変な感じがした」




もしかしたらそれは、私達二人が悲しい最期を迎えてしまった出来事のことなのかもしれない。







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