黄昏の千日紅






「ねぇ、現代の私達はさ…絶対幸せになろう」



幸せにならなくては。
過去のような過ちを繰り返さぬよう。




「…うん」




彼女は、必死に息を凝らしながら、苦しそうに言葉を漏らす。




本当に、前世や過去の事なんて普通では信じられぬことだけれど。理屈では考えられぬことだけれど。




けれど、私は信じたいと思う。
彼女を、信じようと思う。




少しの間、私達の間に沈黙が流れた後、彼女はゆっくり息を吸ってから、落ち着いたのだろう。「ありがとう、凛」と掠れた声を発した。





「…ううん」



寧ろ、親友のことを信じてあげられなかった自分を恥じてしまう。




「あたし、嬉しい……今、本当に嬉しい」




「うん」




彼女の体が、小刻みに震えている。
顔は窓側に向けている為に表情は分からないが、きっと涙を堪えているのであろう。




「嬉しい…」

















「全て計画通りで」


















” 君は永遠に僕のものだよ ”





彼女が私の方へ振り向く。
口元が、ゆるりと綺麗な弧を描く。



瞬間、私の頭の中で、男の囁き声がピアノの音色と共に響き渡った。









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