黄昏の千日紅
一階の受付の前を通り過ぎ、会社を出ようと外を見たら土砂降りだった。
最悪だ。
私は溜息を一つ漏らして、自分の傘を開く。
紅い花柄が散らばっている、デパートで一目惚れをしたブランド品の可愛らしい傘だ。
こんなどんよりとした天候でも、せめてもの気分を上げようと、私なりに考えた結果がこれだ。
「潤?」
背後から名前を呼ばれ、反射的に振り返る。
「あ、麻衣。お疲れ」
「お疲れー」
彼女は会社の同期。
偶に仕事終わりに飲みに行き、仕事の愚痴を零したり、恋愛話に花を咲かせたりする仲の良い友人でもある。
「これから空いてる?ご飯行かない?明日休みだし」
突然のお誘い。
良くある事だ。
確かに今日は金曜日で、明日は会社が休みだ。特に予定もない。
しかし何となく気分が上がらない。
どうしようか。
一層のこと雨の所為にしてしまいたい。
「ごめん。今給料日前でお金厳しいんだわ」
「えー、潤ったら失恋の腹癒せに大人買いでもしたのー?」
彼女がほんのり眉を下げて、尚且つ口角を上げて私を見る。
決して馬鹿にしているわけではないのだろう。
彼女はそういう人なのだ。
いつもテンションが高いというか、ノリが良く会社の上司に気に入られるタイプ。