黄昏の千日紅
「そうそう。この傘も買ったし、最近髪型も変えちゃったから」
失恋の腹癒せか、まあそういうことにしておこう。
胸下まであった髪の毛を、最近ばっさりボブに切ってしまった。
特に失恋したからという理由ではない。
これから夏が来るし、気温も高くなる。
鬱陶しいから、というそれだけの理由だ。
「ん、じゃあまた今度」
彼女は少し頬を膨らませ、可愛らしく怒ったような表情をしてから、私に片手をあげて反対方向へと歩いて行った。
私は彼女の後姿を見送りながら、少しの間その場に立ち尽くす。
心の中で麻衣に対し謝る。
何だろうな、この胸のもやもや。
ノリが悪いとか思われたかなとか、つまらない女だとか思われたかな、とか。
お金がないなんて嘘だ。
本当は特別使う事なんてなくて有り余っている。
しかし、今日はそういうテンションにならなかっただけ。
彼女のように、いつもフットワークが軽ければ良いのだけれど。
すぐさまこんなことを考えてしまう私は、少し人よりも事を深く考え過ぎてしまう性格。
他人なんて、大して自分が思っている程、何も考えていなかったりするものなのに。