黄昏の千日紅
「ほんと、いつもいつもごめんね」
「いや、大丈夫大丈夫」
予鈴が鳴り、人集りは次から次へとレオに声を掛けて去って行く。
そして皆が居なくなり、先程の喧騒が嘘のように静かになった時、レオが申し訳なさそうな顔をして再び謝ってきた。
いや、そんなに謝らなくても。
レオは、大量の人集りに埋まっているにも拘らず、私のこんな目立たない存在にいち早く気付き、いつも謝ってくれる。
沢井くんを退けさせるのも、日常茶飯事。
レオは気が効く男で、顔は中性的で猫のような、どこかふわっとした雰囲気の持ち主だ。
風に吹かれたら飛ばされていきそうな程体は細いが、だからと言って肉付きがないわけではなく、本当にスタイルが良い。
垂れ目なはずだが、凛々しさを兼ね備えている瞳は、真正面から見つめられると逸らしてしまいそうになる、鋭さと色気がある。
鼻筋はすっと通っていて、形の良い唇は桃色で血色が良い。
ミルクティー色の、校内でもかなり目立つ髪色は、男子にしては少し長めで、パーマがあてられているのか癖のあるボリューム感。
顔が良いだけではない彼は、おまけに成績優秀、運動神経抜群。
彼は本当に非の打ち所がない、完璧な人間のように思う。
賢さもあり運動神経も優れていて、なんというか本当に、嫌味な人。