黄昏の千日紅
「河村は一途だねぇ」
少しだけ棘を含んだような、それでいて馬鹿にしたような彼の言い方に不貞腐れて、私は「ほっとけ」と投げやりに言った。
あーあ、可愛くない私。
こういう所の所為で、女っぽくないと言われてしまうのかもしれない。
私の母は頗る美人だし、色気もあるのに、こういう所は父親譲りなのか。残念だ。
閉められたカーテンの向こう側には、キラキラと輝いている王子様のような先輩が、きっと彼女らしき人物と仲睦まじそうに帰っているのであろう。
もう、正門を出た辺りであろうか。
私は、そんな先輩達のシルエットを脳裏に思い描きながら、小さく溜息を吐いた。
隣に立っている高倉との間で僅かな沈黙が続き、やけに外の役者達の声が鮮明に耳につく。