黄昏の千日紅
「先輩はさー、本命いる癖に何で取っ替え引っ替え彼女作るんだろうな」
沈黙を破ったのは高倉だ。
「…さあね」
「あれ、怒った?」
煩わしい。
「ねぇねぇ河村ちゃん、怒っちゃったの?」としつこく問いかけてくる、此奴を誰かどうにかしてくれ。
先輩に本命が居る事なんて、とっくの昔から知っている。
寧ろこの学校で知らない人など、多分その本命の相手くらいであろう。
私はカーテンを少し乱雑に開ける。
暗くなっていた教室内に、再び明るい光が戻り、私は少し目を細めた。
「あ」
私は正門に向かって歩く一人の生徒の姿を目にして、思わず声を漏らす。