黄昏の千日紅





存在を既に忘れかけていた、隣に佇む憐れな高倉の様子を、頬杖をつきながら、横目でちらりと伺う。




彼は意外にも、無言で彼女をじっと目で追っているだけであった。




此奴は私のような人間を馬鹿にする癖に、自分のことは棚に上げて。




いや、上げてはないのだけど。



心の内で一人でノリツッコミをする、悲しい私。




高倉ってば、澄ました顔しちゃって。




頬が少し赤くなってるよ、なんて心の優しい私は言わずに見過ごしてやろうではないか。





「きっと夕陽のせいだね。出てないけど」



「は?なに?」




「別に」






< 29 / 284 >

この作品をシェア

pagetop