黄昏の千日紅
そう思った直後、僕ははっと我に返る。
いやはや、何も知らないのは、僕の方ではないか。
この人達は、僕の知らない彼女の姿を知っている。
途轍もなく自分が情けなくなり、沸々と込み上げていたものが、氷水に浸ったように急激に冷めていくのが自分で分かった。
ぎゅっと強く拳を握り、目の前の三人を睨む。
「は?なに?」
「………別に」
気分が悪い。
化粧の分厚いその顔に、思いっきり泥を投げつけてやりたい気分だ。
「なにこいつ。行こ」
黙って佇む僕の方を、睨むように横目で見て去っていく女子生徒達。
何も出来ない自分、何も知らない自分。
悔しい。
悔しい、悔しい。
何故人間は、こんなに醜いのだろうか。
他人のことを気に要らなければすぐに悪い所を漁り出し、口々に毒を吐く。
彼女達が言っていることを周りが信じれば、それが噂となって出回ってしまう。
そんなの、自分の目で、心で確かめなければ、真実かも分からないのに。