黄昏の千日紅
僕は、両肩に掛けていたバックパックを床におろし、その中から紙とペンを取り出す。
そしてそこに、汚い字で文を書いた。
彼女の背後まで行き、トントンと肩を叩く。
彼女がゆっくりと振り返り、僕を見上げて視線が絡み合う。
その瞳を間近で見た瞬間、僕の背中に冷や汗が垂れ、途轍もなく哀しく、切ない気持ちになった。
彼女の瞳に、色がない。
この向日葵畑の絵のように、鮮やかな色が全くない。
言葉にするのであれば、光が灯ることのない漆黒の闇。
目の前の僕のことさえ見えていないかのような、何かを映すことを拒んでいるかのような悲しい瞳。
彼女の瞳に見入ってしまっていた僕は、書いたメモを見せることをすっかり忘れており、彼女は表情一つ変えず再び絵に向き直ってしまった。
僕は、彼女に何がしたいのだ。
何を求めているのだ。
変な下心がある訳ではないし、彼女に好意を抱いて欲しい訳でもない。
ただ、僕は。
僕は。