黄昏の千日紅
次の日の放課後。
僕の目の前にあるのは、西棟二階の美術室。
委員会で少し時間は遅くなってしまったが、結局来てしまった。
気味悪がられるかもしれない、嫌がられるかもしれない。
拒絶されるかもしれない。
それでも。
僕は、美術室の扉にそっと手を掛ける。
開いた先に、二人の影が見えた。
彼女と、逆光であまりよく見えないが、一人の男性。
ああ、あの人は、東棟では殆ど見掛けることのない、特級クラスの担任の先生だ。
扉が開く音が聞こえたのか、先生はこちらに振り向き、少々驚いた顔を見せた。
「おお、君のことか」
先生がこちらにゆっくりと近寄って来る。
絵の具が彼方此方に飛び散った、カーキ色のエプロンを首から下げ、白髪の目立つ黒髪、そして縁の無い眼鏡をかけている。
君のこと、とは一体何のことであろうか。