黄昏の千日紅
彼女との出会いから、三ヶ月が経過した。
あれから彼女とは、放課後一緒に出掛けたり、カフェでゆっくり休んだり、休日に字幕の映画を見たり、と、二人の時間を楽しんだ。
大分手話も覚えてきて、彼女と日常会話は話せるくらいには成長した。
街中でそんな僕等をじろじろと、白々しい目で見てくる他人は沢山いた。
しかし、前は女々しかった筈の僕が気にすることはなくなった。
それは多分、他人に他人のことが分かる筈がないと思えるようになったから。
理解出来る人なんて、本当に一握りであると思えるようになったから。
彼女と出会えて、知り得たことがある。
人は、行動しなければ本当に何も始まらないこと。
僕はあの時、勇気を出して彼女にメモを渡して帰ったことを、自分で誇りに思っている。
もしあの時、一切行動を起こしていなかったなら、僕は後悔で押し潰されていただろう。
きっと、何だってそうだ。
やらなかった後悔より、やった後悔の方が何倍も良い。