黄昏の千日紅
____彼女の所へと、今日も足を運ぶ。
美術室の扉を開けると、窓から見える外は、真っ白な雪景色。
暖房がついているこの空間は、廊下から入った途端、身震いしてしまう程に暖かく心地よいものである。
相変わらず彼女は、一生懸命に筆を動かし続けている。
遠目から見るその絵は、初めて目にするもので、もう少し色を載せれば完成する所まで進んでいた。
僕は、ゆっくりと彼女の背後へと歩みを進める。
しかし、数歩進み彼女の描く絵がはっきりと僕の視界に入った所で、ぴたりと足を止めた。
体が金縛りにあい、硬直したかのように動かなくなる。
自分の視界が次第に歪み、じわじわと目の前が水の膜で覆われていくのが分かる。