黄昏の千日紅
「…何だよ、それ」
彼女は僕の涙声に一切反応しない。
ただずっと筆を動かし続け、繊細に丁寧に、色を載せていっている。
「ずるいだろ…そんなの、反則だ…」
自分の目から遂に一筋、また一筋と涙の雫が落ちて、地面にぽたぽたと音を立てていく。
それを幾ら手の甲で拭っても、それがまた涙腺を崩壊させるに過ぎない。
こんなに素晴らしい絵は、今までに見たことがあったであろうか。
人生で、ここまで感動を得られたことがあったであろうか。
何故、こんなにも僕が涙を流しているのか。
それは、
彼女の天才的な才能が、僕を魅了しているから。
その美しさに、感極まってしまっているから。
けれど、それだけではなく。