黄昏の千日紅
「おねーさんって彼氏いるの?」
「居ませんが」
うわ、しまった。
何を普通に真実を述べてしまっているのだ、私の馬鹿。阿保。
いや、脳内で色々と考えていたら、急に此奴が話し掛けてくるからであって。
ああ、「居ますよ」とでも嘘をついておけば、このような厄介者は諦め、二度と現れなくなったのかもしれないというのに。
私は盛大な溜息を吐き、それを見た物体Xは、くすりと笑みを零した。
「へぇ、じゃあ俺頑張っちゃおっかな」
「………」
「ていうか!初めて質問に答えてくれたよね」
そう言っている物体Xは、無邪気に顔を綻ばせ笑っている。
笑うと八重歯が見えるのか、なんてどうでもいい所に目が行ってしまう。
悔しいが、本当に顔は整っている。
何故か、女である私が羨む程に。