黄昏の千日紅
「いい収穫も出来たし、今日はかーえろ」
ああ、やっと帰るのか。
物体Xはいつものようにコーヒー片手に、こちらに手を振って扉まで歩いて行こうとする。
私はその姿を見ながら「ありがとーございましたー」と少し雑に言いつつ、項垂れた。
すると、カウンターに純白の紙袋が置いてあることに気付き、扉に手を掛けようとする男を慌てて呼び止める。
「お客様、お忘れ物です」
男がこちらに振り向くと、
「え?それ、おねーさんのだよ」
と、妖艶に微笑みながら私に告げ、店を出て行く。
私はその後ろ姿を呆然と見送っていた。
「…私の?」
呆気にとられ、その場に立ち尽くしてしまった私は、はっと我に返り、紙袋に恐る恐る触れてみる。
まさか、何かのドッキリ?
爆弾でも仕掛けられていたらどうしよう。
そんなことを考えつつ、紙袋をゆっくりと覗いてみた。