黄昏の千日紅
「……ん?」
中には、ハンカチと、私が無くしたと思って数日間は病んでいた少しお高めの折り畳み傘。
中からそれらを取り出してみると、ハンカチは高級なブランド品の物で、私のような庶民には、到底手の出せない品物であった。
「ど、どういうこと…?」
頭の中が混乱状態に陥る。
私、そんなに女子力が無さそうに見えるのであろうか。
一応大学生の私が、ファストフード店でアルバイトをしているからか。
学生だから、お金が無いとでも思われたか。
いや、確かにこの傘は私の物に間違いない。しっかりと無くさないようにと取手に自分の名前のイニシャルのシールを貼っていたし、現に貼ってある。
だが、このハンカチは?どう見ても新品で、私の物ではないことは確か。
遠回しに馬鹿にされている?もしくは貶されているのか。
今度来た時に返そう。
というか、何故あの人が私の探していた傘を持っているのだろうか。
悶々と考えながら、それらを紙袋の中に戻そうとすると、下の方に、一枚のメモのような物が入っていることに気が付いた。
その時、BGMが耳流れ込み、ドアの方を見遣ると、珍しくお客様がいらした。
私は紙袋をさっと、下の棚へと隠すと、笑顔で「いらっしゃいませ」と言った。