黄昏の千日紅





特別、ホストになりたくてなった訳ではない。



ただ単に、金が必要だった。






俺が中学三年の冬、両親が突然蒸発した。


手紙に書かれていた訳でもなく、何か俺に残していった訳でもなく。



ただ、忽然と二人は姿を消した。




二十五歳になった今でも、親の行方も生存さえも分かっていない。




最初は旅行にでも行ってるのか、と思う程度だった。



しかし何の連絡もない、一週間も帰ってくる気配がない。



意外と、他人の子供よりかは冷静でいられたと思う。



それは、両親がその内、いつものようなへらへらした表情で、何事もなかったかのように帰ってくると、心のどこかで信じていたからだ。




しかし、そんな都合の良い妄想は、すぐに掻き消された。





家に債鬼が乗り込んできた時、俺は全てを悟った。






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