黄昏の千日紅





頼れる親族一人居なかった俺は、この先どうやって生きていこうかと途方に暮れた。



行方を眩ました両親が、全て持って行ってしまったのであろうか、それとも全て使い切ってしまったのか、家に金は一銭も残っていなかった。




学校にも行けなくなった俺が、空腹に耐えながら家の隅でうずくまっていると、玄関の戸を勢い良く叩く大きな音と、酷い罵声が聞こえてきた。





俺はまだ中坊の餓鬼だった為に、そんな世界があることを、全く知らなかった。





目の前の現実で起こるそれは、ただ恐怖でしかなかった。





その日から、ドラマや漫画でしか見たことのないような世界が、俺をいとも簡単に残酷な底へと突き落とした。




両親は、抱えていた多額の借金を返済することが出来ずに、結局逃げることを選んだのであろう。



そして、何故。俺を置いていったのだろう。



一体いつそんな大量の借金を背負うことになってしまったのか、その、事の発端は何だったのか、両親が居なくなった今となっては分かる筈もない。




しかし、俺は、こんな餓鬼に払わせる程、世の中も鬼畜ではないと思っていた。








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