黄昏の千日紅
しかし、そんなことはただの幻想の世界。
俺の知った現実は、頗る苦くて、いつも鉄のような血の味がした。
何日かおきにやって来る彼等に、こっ酷く殴られ蹴られ、俺の体が虚しく地面に転がる日々。
俺はその瞬間、初めて両親を恨んだ。
たった一人の息子に何も告げることをせず、残して逃げてしまった肉親を、恨むことしか出来なかった。
借金の額は、ゼロが有り得ない程ずらりと並んでおり、到底未成年で、まだ義務教育の俺が稼いで返せるものではなかった。
家に籠ることさえも怖くなった俺は、ある日の夜中、逃げるように、手ぶらでサンダルを引っ掛け、外へと飛び出した。
何故こんなに辛い思いをしなければならないのだと、こんな思いをするくらいなら一層の事死んでしまった方が楽だと、そんなことを頭に浮かべながら、ひたすら夜の街を駆け抜けた。