黄昏の千日紅
オーナーは、中坊の俺に、特別何かを話すことはなかった。
ただ、三度の食事を与えてくれ、シャワーや服、寝床さえも貸してくれた。
四日程、水だけで生活していた俺は、食事を与えられた時、最初は気分が悪くなって口にできなかった。
しかし、それを見たオーナーは無言で俺にお粥を差し出した。
その粥を渋々口に運ぶと、俺の胃がじわじわと刺激され、急激に食物を欲した。
その後は無我夢中で、食べ物を胃に運び込んだ。
その時、俺の人生で憶えてる限りで、初めての涙を流した。
そんな泣きながら食べる俺を、オーナーは無言でじっと見ているだけであった。
俺は、この場が、天国なのだと思った。
そして、この人は、神なのだと思った。
何かを悟ったかのように、何も問い質すこともせず、ただ煙草をふかしながら、俺を匿ってくれるこの人は何者なのだろうと考えたが、俺も、何も問うことはしなかった。