黄昏の千日紅
「今更、何の用だ」
俺が問うても、彼等にはまるで聞こえていないかのように、鋭く拳が降り掛かかる。
「おめえは結局、他人に頼んなきゃ生きられねえ餓鬼なんだよ」
「……っ…んだと」
「他人に返済して貰ったんだよなあ?その、オトシマエってやつだよ」
何かを発して、俺は反論したと思う。ただ、そんなことは無駄で、彼等の怒りを助長させるだけであった。
「おめえも残念な人生だなあ?糞親に逃げられて孤独になって、可哀想になあ?」
何を言われても、俺はもう言い返す気力もなく、ただぼうっと彼等の顔を見ていた。
歪んでいる。
こいつらも、この世も。
散々に殴り蹴られた後、野次馬が警察を呼んだのか、彼等は舌打ちをしてその場を去って行った。
雨の中、ぐしゃぐしゃに濡れた服が体にへばりついて気持ちが悪い。
頭も重く、視界も霞んでよく見えない。
身体は彼方此方が鋭く痛み、動こうとしても立ち上がれなかった。
近くのゴミ箱に手を掛け、自力で路地裏の壁に寄り掛かり、そこに少しの間座っていた。