黄昏の千日紅

何時間かに一度、定められた時間なのか男が食事を運んでくる。




初め、少女がそれを黙って受け取れば、頬に鈍い痛みが襲い、強い口調の罵声を浴びせられた。





どうやら、何かしらの言葉を発しなければならなかったらしく、その男の癇に障ったようであった。




それから少女は「ありがとう」と言うようになった。




すると男は満足したように、少女の頭をそっと撫で、何か甘い言葉を耳元で囁いた。





「ありがとう」の他には、食べる前に「いただきます」、そして食べ終えた後に「ごちそうさま」




シャワーやトイレには、行かせてもらえた。



そこにも、監視するようにその男が付いてきた。




少女は、基本的に「ありがとう」を口にすることが多かった。


そう言えば自分に被害が及ばない為に、少女はまるで壊れた人形のように、いつでもそれを口にした。






そんな何の変哲も無い単調な毎日を、少女はずっと暗闇の中で過ごしている。