雨の怪物
「そう、それ!夢ちゃんは分かっていますね・・・それに引き換え、この男共と来たら・・・。」
俺も同罪かよ?
「俺は、何も言ってないだろう?」
必死に反論するが・・・
「目が馬鹿にしてた。」
・・・・・・・マジですか?
「ごめんなさい。」
とりあえず、あやまっておいた。
なぜ、俺があやまらなくてはいけないのだろうと、頭を下げてから思ったが、とりあえず気にしないことにしよう。
「それにしても、琴美先輩まで・・・か・・・。」
手元にあるオレンジジュースに口をつけながら、夢がそんなコトを口にする。
平日の昼間とはいえ、ガラガラの喫茶店ビスコ。
人通りが少なくなったメインストリートには、入れ替わるようにパトカーがめまぐるしく走っている。
聞こえてくるアナウンスはどれも一緒。
疾走事件が多発しています。目撃情報がありましたら、どんな些細なことでも良いので、最寄の警察署まで。
また、夜中や狭い路地は出来るだけ歩かないように、常に二人以上で行動し、親御さんは、お子さんから決して眼を離さないように・・・。
聞き飽きたが、犯人が見つからない以上は次の被害者が出る可能性はあるのだ。
それにしても・・・・・・・疾走事件・・・か。
死体が見つからなければ『殺人事件』にはならない。
犯人からの要求がなければ『誘拐事件』にはならない。
だから、コレは『疾走事件』
偶然、同じ市内で三人の人間が消えてしまった『疾走事件』なのだ。