雨の怪物


「それでも、悠人くんは体力ないじゃないか?私は、まだ合気道習っているし・・・。」


 それは、安易に私が送っていこう・・・という意味を含めている。


 絶賛片思い最中の夢さん。


 ここぞとばかりに、アピールしたいのだろうが、そんなこと言われて喜ぶ男はあまりいないぞ。


「だったら、由紀の方を守ってやってくれ・・・俺のほうはコレでも、多少の武術を心得ているから大丈夫だよ。」


 それだけを言い残すと、悠人はその場から去っていってしまった。


 まぁ、実際あいつのことだから大丈夫だろうが・・・。


「残念だったな。」


 とりあえず、残された夢に言ってみる。


「ううん・・・別に・・・どうせ、断られると分かっていて、言ってみただけだからいい。」


 ・・・?


「そうか。」


 相変わらず、よく分からない女だ。


 とりあえず、これで二人きりの帰り道。


 先ほどまで青かった空には、すっかり雲がかかって、今にも降りだしそうな空だ。


 先ほどのビスコで傘を忘れてきてしまったことだし、急いで帰ろう。


 そう思い、交差点を左に曲がった矢先。


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