雨の怪物
「うわっ・・・やっぱり振ってきたよ。」
夢と別れて自分の家に向かう途中。
一面の灰色の空はとうとう我慢しきれず、雨を落とし始めた。
一応、このあたりは近所なので雨宿りできそうな場所はいくつか見当つくが、ここからだったら、走って帰ったほうが無難な選択だといえる。
「まったく、ついてねぇ!」
叫んだところで雨はやまない。
傘は先ほど四人で行った喫茶店ビスコに忘れてきてしまった。
雨で自分の身が濡れるのは仕方ないが、リュックに入った教科書類が心配だ。
これでも、ノートはしっかり取っているほうだというのに・・・。
「ぐわぁああ!」
謎の叫び声を挙げながら全力疾走。
雨の音でかき消されるから聞かれる心配はない。
よし、このペースならあと五分で家に・・・・・・・・・・・。
「由紀?」
瞬間、知っている声が由紀の耳に届いた。
それは、雨の音がうるさいにもかかわらず、透き通るようにすんなりと由紀の耳に届く心地よい声。
・・・・・・いや、まさか・・・・・・・。
由紀は雨の中足を止める。
声のしたほうこうに顔を向けると、そこに居たのは、漆黒の綺麗な髪を肩まで伸ばした、白いワンピースを着た、綺麗な女性が・・・・・・。