雨の怪物


「琴美・・・先輩?」


 最初は見間違いだと思った。


 そんなコトがあるはずないし、いや・・・あったら、もっとニュースになっていないとおかしいのだ。


 しかし、先輩はあの頃のように優雅に微笑むと・・・。


「やっぱり由紀だ。こうやって会うの久しぶりだね・・・元気だった?」


 と、手を振って、こちらに近寄ってきた。


「琴美先輩!今までどこに居たの?」


 かつて、付き合っていたもの同士、先輩といえど、抜けた敬語は中々戻らない。


 あわてた声を上げて、由紀も公園の中に入り、先輩の下に近づく。


 あれ?雨が・・・やんだ??


「今までどこにって・・・公園にだけど?えっと・・・ブタ公園だっけ?ここ?」


 いや、確かにブタ公園であってるけど(いや、正確な名前は俺も知らないし、ただ、豚のオブジェが置いてあるから、近所の人たちが、勝手にそう呼んでいるだけだけど・・・)そんなコトを聞いているわけじゃない。


「先輩、今まで行方不明って・・・」


 今朝もニュースで流れていた。


 学校でも全校集会が開かれた。


 ホームルームでも注意されたし、今も警察が必死に捜索している。


「うそっ!そんなコトになってるの?私!全然知らなかったよ!」


 そりゃ、知ってたらもっと早く連絡しただろうな・・・。


「とにかく、早く家に連絡をしろよ。あれだったら、家まで送るよ。」


 まぁ家まで送れば、確実に自分も警察の尋問にあうのは目に見えるが、既に警察から尋問は受けている。


 一度受けるも、二度受けるも変わらないし、このさい我慢しよう。


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