雨の怪物
「う~ん・・・それは別に良いや。」
あれ?
「いや、何で?だって先輩もう家に何日も帰ってないし、警察だって着ているんだよ。絶対連絡ぐらいは入れたほうがいいって。」
「うん。だから、連絡は入れておくよ。でも送ってくれなくても大丈夫。」
・・・・・・・・・・・。
「・・・そう。」
何となく、その言葉が先輩らしいと思った。
たぶん、自分が逆の立場でも同じコトを言っただろうな・・・と思うと、余計にグサリと来るものがあった。
もう、先輩と俺は赤の他人。
同じ学校の、ただの先輩後輩でしかないんだな・・・・。
だから、ただ家に送るという・・・そんな友達ですら行う行為ですら、先輩は許してくれない。
「ゴメンね。大丈夫。ここからだったら帰り道も分かるし・・・。」
そうだな・・・。
昔は二人で、良くここを通ったものな・・・。
「そっか・・・一応、犯人は捕まってないみたいだし、気をつけるんだよ。警察を見かけたら声かけときな。」
それが、別れの言葉。
それに対して、先輩は『大丈夫だって、これでも由紀より年上なんだから』と、笑顔で手を振ってくれた。
公園から出ると、再び雨が降ってきたようだったので、由紀はそれから、振り返ることなく、家に向かってダッシュした。
目から流れたのは雨だったのか、涙だったのか、自分でも知るよしはないし、知る気もない。