雨の怪物


「別に・・・。元々そういう顔なんだよ。悪かったな。」


 言うと、由紀は机の隅においているカバンを背負う。


 ファッション性よりも機能性を重視したリュック。


 我ながら、黒一色のダサいデザインだというコトは、言わなくても分かっているが、時に六時間、すべてに強化書ノートが必要な高校生活には、コレぐらいのリュックが一番効率が高いのだ。


「あ、ちょっと待てよ。」


 立ち上がった瞬間、夢に呼び止められた。


 別に何を言わなくても長い付き合い。


 だいたい分かってしまう。


 ・・・・我ながら悲しい性だな・・・。


「駅前のビスコだろう?悠人に声をかければ満足か?」


 どうせ、そういうコトだろうと先読みして言ってみる。


「おぉ・・・お前、とうとう読心術でも覚えた?」


 ・・・アホ。


「夢の思考が単純なだけだ・・・。まったく、たまにはお前から誘ってみたらどうなんだ?」


 好きであることは、誰の目から見ても明白。


 気がつかないのは、向こうが鈍感だから。


 ・・・俺なんぞ使わず、自分から声をかけないことには進展しないと、ナゼ気がつかない。


「・・・そんな大それたこと、私ができるはずないじゃん。」


 ・・・・・・・・・・・・嘘付け、男女が・・・。


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