雨の怪物

 由紀と夢の付き合いは古い。


 いつの頃からかといわれれば、おそらく小学校からだ。


 小学、中学とクラス変えのない学校を進んだ彼らは、9年間を同じ教室で過ごした。


 何となく席も近く、話すことの多い二人。


 息が合うのは、お互いの性格からではなく、今までの人生の中で一番多く接する機会が多い相手だったからだと言うほうが正しいかもしれない。


 それは、高校に入ってからも変わらない。


 今さら、夢の可愛さに、クラスの男子共が騒いだところで、由紀には理解できないのだ。


 それに、お互いにお互いが異性と意識する前からの付き合い。


 ここに来て、男と女になることは出来ない。


 幼馴染が、意識して付き合うなんて、おとぎ話の世界の話なのだ。


 だいたい、夢は現在、ナゼか俺の友人に絶賛片思い中だし・・・。


「でね、その遺体が発見されたのは、雨の日だったのだけど、なんと、まったく濡れていなかったのだよ!」


 男二人に女一人ではバランスが悪いというコトで、いつも夢、由紀、悠人の他に、夢の友達である、井倉亜矢さんが入ることになる。


 ショートヘアーのちょっとぽっちゃりした、きれいと言うより、可愛いと言ったほうが良く似合う女の子。


 一般水準に比べると、上ランクに入るかもしれないが、横に並んでいる夢が悪いのか、彼女の持つ印象は、良くも悪くも、普通の女子高生である。


 ・・・・・・もっとも、前置詞に『大の噂好き』・・・と言うものが付くが・・・。


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